Adobe Commerce / Magento Open Sourceでインボイス制度対応する方法

2023年10月から施行されている「インボイス制度」。
今回はAdobe Commerce / Magento Open Source(長いので以下Magento)でインボイス制度対応をする方法について解説したいと思います。

インボイス制度対応に必要な調整

既に経理や税務の担当者の方は国税庁が公開している資料を読まれていると思います。
その上でインボイス制度に対応するためにECシステムが必要なことを整理してみましょう。
例えば以下のような対応が必要になってきます。

  • 小計および課税対象金額の計算式の変更
  • 税率別の小計および税額の表示
  • 登録事業者番号の表示

これらをMagentoで対応しようとすると、次のような課題が出てきます。

  • 抜本的な金額計算式の見直し
  • 日本以外の国・地域との兼ね合い
  • PDFの調整
  • メール文面の調整
  • 画面の調整(カート・チェックアウト・注文履歴・印刷)
  • APIの調整

これらを解決するために開発されたエクステンションが「Magentoj_JapaneseConsumptionTax」です。

Magentoj_JapaneseConsumptionTax とは

このエクステンションは、Adobe日本法人側で実装されたものです。日本独自の制度であるインボイス制度に対応させることを目的としています。

  • 登録事業者番号の表示(メール・PDFなど)
  • インボイス制度に沿う形での金額計算式の調整
  • 税率別小計・税額表示の調整

といった機能が実装されています。
このエクステンションをインストールすることで、インボイス制度に対応した表示・表記と計算結果が得られます。

インストール方法

このエクステンションはpackagistに登録されています。そのため、composerコマンドで簡単にインストールできます。

composer require magentoj/magento-japan-tax

を実行し、あとはエクステンションを有効にします。
(このあたりはよくあるMagentoエクステンションのインストール方法ですね)

登録事業者番号の入力

正常にインストールができていれば、

ストア > 設定 > 税

の一番下に、「日本消費税システム設定」という項目が追加されています。

登録事業者番号入力欄

ここに登録事業者番号を入力します。

税率の設定

Magento上で税計算をする運用のサイトの場合は、既に問題はないと思われますが、念のため8%と10%の税率が定義済みであることを確認しておいてください。
もちろん、商品税区分についても軽減税率用の区分が登録されていることが望ましいです。

表示内容の確認

では、商品をカートに入れて実際の表示を確認しましょう。
標準の場合は次のような表示になると思います。

標準の小計表示

このエクステンションが有効な場合は次のような表示になり、税率別の小計と税額が表示されます。
(ここがインボイス制度対応の要件の1つですね)

インボイス制度対応の小計表示

サーバーサイドの処理としては、

  1. 税率別に金額を集計
  2. 税額を算出
  3. 合計金額として合算

という処理をしています。
Magento本来の処理としては、

  • 伝票合計での課税
  • 行合計での課税
  • 単価での課税

が用意されています。
インボイス制度は「行合計での課税」に近いものですが「税率毎に金額を集計してから税額を算出」という部分が異なります。
(より厳密には消費税額の割戻し計算などもありますが、一旦脇によけておきます)

Magentoのコア実装が改修されなかった理由

本来であれば、Magentoのコア実装が改良されることが望ましいのですが、以下のような理由によりエクステンションの形になりました。

  • この制度が日本独自の制度であること
  • インボイス制度の内容をコア開発者に十分に説明するための時間が足りなかったこと
  • 他の国・地域の制度との兼ね合いを考慮しなければならなかったこと

特に「インボイス制度」そのものを説明するのは非常に難しく、

単なる端数処理の問題ではないのか

計算式の意味がわからない

という誤解や反応を受けたりもしました。
やはり「インボイス」という言葉が誤解を招く原因なのではないかなと感じるフシすらありました。

最終的に日本語化と同様の手法で対処

以前から日本語・日本円向けの調整においては、

  • フリガナ
  • 氏名・住所の並び
  • 都道府県の並び
  • 小数点以下の非表示
  • 金額の端数処理
  • PDFのフォント

といった固有の課題がありました。

これらについては既にバージョン2.3系向けにリリースした日本語化エクステンションの形で対応・実現しています。
今回のインボイス制度も同様の手順を踏むことによって、短期的にはMagentoのコア実装の改変を回避しています。
(長期的にはコア実装が改良されてもっと簡単に対応できるようになれば良いのですが)

ご意見お待ちしています

Magentoj_JapaneseConsumptionTaxは現在Adobe日本法人主導で開発が進められています。
もちろん弊社もアイデア出しや動作試験、プルリクエストなどの形で協力しておりますが、より広い視点でのフィードバックが必要です。
ぜひ、Adobe Commerce / Magento Open Sourceをお使いの方にはフィードバックをいただければ幸いです。

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