Adobe Commerce / Magento Open Source 2.4.8-beta1がリリースされました
リリーススケジュール通り、Adobe Commerce / Magento Open Sourceの次期バージョンである2.4.8のベータリリースが行われました。
2.4.8の正式リリースは2025年4月に予定されているものですが、早めに動作検証を進めていくことがスムーズなアップデートにつながります。
この記事では2.4.8-beta1のリリースノートから重要な点をピックアップしてお伝えしたいと思います。
動作環境の変更
ほかのアプリケーションでも概ね同様ですが、バージョンアップの際には動作環境の見直しが行われることがあります。
Adobe Commerce / Magento Open Sourceでも同様です。
- PHP
- データベース
- 検索サーバー
- その他
の4点を紹介していきましょう。
PHP
まず最初はPHPです。
Adobe Commerce / Magento Open SourceともにPHPで書かれたアプリケーションであるため、動作可能なPHPバージョンには常に注意を払う必要があります。
2025年のロードマップの紹介でも触れましたが、動作可能なPHPバージョンについては下表のとおりとなっています。
バージョン番号 | 対応PHPバージョン |
2.4.4 | 7.4 & 8.1 |
2.4.5 | 7.4 & 8.1 |
2.4.6 | 8.1 & 8.2 |
2.4.7 | 8.2 & 8.3(8.1でも一応動作可) |
2.4.8 beta1 | 8.2 & 8.3 |
今回のベータリリースでは明確に「PHP8.1はサポート対象から外す」と書かれています。
2.4.4および2.4.5からのアップデートは一足飛びには難しい可能性がありますので、2.4.6または2.4.7を間に挟むほうが安全と言えるでしょう。
データベース
続いてデータベースです。
MySQLまたはMariaDBが利用できる点については変更はありません。
2.4.8 beta1では、
- MySQL 8.4 LTS
- MariaDB 11.4 LTS
がサポート対象に加わりました。
バージョン別動作環境の表では、2.4.7までは
- MySQL 8.0
- MariaDB 10.6
となっていますので、サポート範囲が拡大されたことになります。
検索サーバー
今回のリリースで影響がありそうな点は、この検索サーバーです。
Adobe Commerce / Magento Open Source 2.4系では、データベースを用いた商品検索機能は標準から外れており、
- Elasticsearch
- OpenSearch
のいずれかを検索サーバーとして利用するようになっています。
2.4.8 beta1では、リリースノートに以下のように書かれています。
Adobe Commerce is now optimized for OpenSearch 2.x and is no longer compatible with Elasticsearch. All Elasticsearch 7 and 8 modules and classes are now deprecated in the codebase. Adobe strongly recommends transitioning to OpenSearch for both on-premises and cloud infrastructure deployments to ensure continued support and compatibility.
2.4.7まではElasticsearch 7.x / 8.xがサポートされていましたが、2.4.8では「Deprecated」がつけられるように変わっています。
そのため、現在Elasticsearchを利用している環境については、2.4.8にアップデートする際にOpenSearchへの移行を検討する必要がでてきます。
その他
コンポーネントレベルでは、以下の変更がアナウンスされています。
- jquery/validate 1.20.x
- moment.js 2.30.1
- monolog/monolog 3.x
- monolog/Require.js 2.3.7
- TinyMCE 7.x
- wikimedia/less.php 5.x
TinyMCEについては2024年10月のアップデートで既に導入されています。そのほかについても基本的には脆弱性対応などがメインです。
Indexerの初期モード変更
Adobe Commerce / Magento Open Sourceの運用でしばしばトラブルになりやすい「Indexer」ですが、2.4.8 beta1では初期動作モードが変更になりました。
元々動作モードとしては、
- Update on Save(随時更新)
- Schedule(定時処理による更新)
が用意されており、2.4.7までは「Update on Save」が初期モードでした。
2.4.8 beta1からは「Schedule」が初期モードになるよう変更されています。データ量の多いサイトや、更新頻度の多いサイトが増えてきたことが原因ではないかと思われますが、パフォーマンスを安定させるためにもこれは良い判断だと思われます。
在庫管理
Adobe Commerce / Magento Open Source 2.3で導入されたMulti Source Inventory(複数拠点在庫管理)機能。
この機能が導入された際に、それまで標準として利用されてきた在庫管理機能との互換性を維持するための処理が残されていました。
ただ、互換性維持のための処理が残された関係で、2.4.7までの在庫管理では在庫数の不整合問題が起きやすかった面がありました。
2.4.8以降では、この互換性維持のための処理が廃止され、在庫不整合に関する問題が解消されているとされています。
その他の変更
その他の変更としては、
- GraphQLの対応範囲拡充
- 各コンポーネントの不具合修正・脆弱性対応
が行われています。
目立った新機能は現時点ではアナウンスされていませんがbeta2で追加される可能性はありえます。
後方互換性のない変更
まとめ
2025年4月にはAdobe Commerce / Magento Open Source 2.4.8がリリースされる予定となっています。
2.4.8 beta2のリリースは2025年2月としばらく間が空いてしまいますが、既に安定度はそれなりにでているため、動作検証を始めるにはうってつけでしょう。