2026年のAdobe Commerceのリリース計画が公開されています

10月17日、AdobeはExperience League上でAdobe Commerceの2026年のリリース計画を発表しました。
今回はこのリリース計画について解説していきたいと思います。

これまでのAdobe Commerceのリリーススケジュール

2025年までのAdobe Commerceは、以下のようなサイクルでリリースを行ってきました。

  • 2ヶ月毎(2月,4月,6月,8月,10月)のセキュリティリリース
  • 年1回の新バージョンリリース(4月)
  • 不定期の緊急パッチリリース

定期リリースについては概ね12月以外の偶数月の第2週にリリースが計画されており、実際そのとおりリリースされてきました。
このサイクル自体はやや頻繁ではありましたが、一応計画されたものとして恒例化してきていました。

これまでのリリースサイクルの問題点

ただ、これまでのリリースサイクルには問題もありました。例えば以下のようなものです。

  • リリースが頻繁すぎる(2ヶ月に1回では動作検証が間に合わない)
  • セキュリティアップデートなのにそれ以外の仕様変更が含まれる

前者はテストの自動化などで対処できなくもないのですが、後者についてはかなり問題でした。
特にリリースノートに記載がない仕様変更がたびたび含まれた結果、動作検証や実装の調整に手間を取られる事が多くありました。

2026年からのAdobe Commerceのリリーススケジュール

最初にExperience Leagueに掲載されているスケジュールの図を見てください。

2026年のリリース計画

この図にまとめられている、2026年のリリース計画としての変更点としては以下のとおりです。

  • セキュリティパッチは毎月リリース
  • パッチはQuality Patch Tool経由で適用が可能
  • 年1回(5月)の定期バージョンアップ(新バージョンとパッチ適用済みバージョン)
  • 10月のパッチ適用済みバージョンリリース(※ない可能性もあり)

最も大きな変更点としては、「2ヶ月ごとのパッチバージョンリリースがなくなった」ということです。
セキュリティパッチはすべてQuality Patch Tool経由となり、Adobe Commerce本体のアップデートは年1回しかでなくなりました。

新しいリリーススケジュールのメリット

新しいリリーススケジュールのメリットは以下のとおりです。

  • パッチの適用が統一したツール(Quality Patch Tool)でできるようになる
  • セキュリティ修正が今までよりも早くリリースされるようになり、ゼロデイのリスクが減る
  • 修正の内容が個別のパッチ形式になるため、内容を確認しやすくなる
  • 他のモジュールやパッケージのアップデートが不要

Adobe Commerceは非常に多くのコンポーネントから構成されているため、下手に更新をかけてしまうと収拾がつかなくなることがあります。
独立したパッチであれば影響範囲は限定的なので、目視で変更点を追うことも難しくはありません。

新しいリリーススケジュールのデメリット

反対にデメリットは以下のとおりです。

  • パッチの適用順を管理する必要がある
  • 毎月Quality Patch Toolの更新が必要
  • オンプレ環境の場合はパッチ適用方法の検討が必要

Magento1.x時代は今回と同じ方式のセキュリティパッチが提供されていたため、

  • どのパッチが適用済みか
  • どの順番で適用していくか

ということを管理する必要がありました。

パッチの適用状態は現在であればQuality Patch Toolを使えば管理できますが、適用順は自前で管理しなければなりません。そのため、適用するべきパッチを抜かしてしまうようなミスをどう防ぐかが重要になります。

毎月Quality Patch Toolの更新については、これは仕方ありません。パッチのリリース日にあわせてQuality Patch Toolを更新しましょう。

そして最後が課題です。Adobe Commerceクラウドの場合は .magento.env.yaml に定義するだけでパッチ適用ができますが、オンプレ環境(Adobe Commerce / Magento Open Source問わず)についてはどのようにパッチを適用するかが課題になります。
ここはソースの管理方法やデプロイ方法によって変わってくるため、それぞれのプロジェクトで考える必要があります。

2026年1月のパッチは要チェック

いずれにしても、2026年からはAdobe Commerceのリリースはこれまでと大きく変わります。
早速1月からパッチがリリースされる予定なので、年始早々の対応が必要になってきますね。
それがどれくらいの粒度でリリースされるかによって、2026年のAdobe Commerce / Magento Open Sourceの管理の行方が見えてくると思います。