この記事は「Adobe CommerceでLiveSearchを試してみる」の続編です。
LiveSearchそのものがアップデートし、色々と変わった部分もあるようなので、主に良くなった点を中心にご紹介したいと思います。

現在のLiveSearchの状況

以前取り上げた際のLiveSearchはバージョン1.2系でした。
気がつくとバージョンが3.1系まで上がっていて、

構文解析が改良されて日本語に対応したらしい

という噂も。

1.2系のときはかなり残念な挙動だったので、早速試してみることにしました。

まずはモジュールをアップデート

最初にLiveSearch関係のモジュールをアップデートします。現在のLiveSearchは3.1系なので、

  • composer.jsonの編集後、composer update
  • composer requireをバージョン指定で実行

のいずれかを実施します。
その後、LiveSearch関係のモジュールを全て有効化し、setup:upgradeを実行しておきます。

これでLiveSearchを最新版に更新できるはずです。

管理画面を確認

アップデートの完了後、管理画面を確認していきます。
以前と変わった部分としては、

  • 設定画面が「ストア>設定」から「システム>Commerce Service Connector」に移動した

でしょうか。
管理画面のメニューとしても、次のように項目が増えています。

 メニュー

この「Commerce Service Connector」にアクセスすると、次のような画面になります。

Commerce Connector Setup

「Sandbox」と「Production」の両環境に対するキーと証明書、それから「SaaS Identifier」については、以前のバージョンの設定と同じものです。
新たに追加になったものとしては、「IMS Organization」があります。この設定は任意です。

Adobe IMSとは

「IMS」は「Identity Management Service」の略で、Adobe IDを使用してAdobe Commerceの管理画面に対するアクセス権を管理するものです。
詳しくはExperience Leagueのページをご覧ください。

LiveSearch管理画面

続いて、LiveSearchの管理画面を確認してみましょう。
マーケティング>Live Search」にアクセスすると、次のような画面が表示されます。

Live Searchトップ

Live Searchの管理機能としては、

  1. Performance
  2. Faceting
  3. Synonyms
  4. Search Merchandising
  5. Category Merchandising
  6. GraphQL
  7. Settings

が用意されています。
パフォーマンス統計の表示や、ファセット・シノニムの設定といった検索に関する機能が用意されています。
基本的にこれらの設定値はLive Searchサービス側に記録されます。Adobe Commerce側には記録されないので、注意が必要です。

設定画面の解説については、Experience Leagueに色々とコンテンツが用意されているので、そちらをご覧いただくと良いでしょう。
まだまだ改良中のサービスなので、気がつくと新機能が増えているということがあるようです。

検索してみる

さて、一番気になる「検索性能」です。
Live Searchがカバーする範囲としては、

  • サジェスト
  • 商品一覧
  • キーワード検索結果

の3つがあります。

上から順番に見ていくことにしましょう。

サジェスト

標準の機能と同様に、キーワード検索欄にテキストを入力すと、結果が得られます。

サジェスト結果

標準機能よりも結果が得られるまでの時間が短く、応答速度に優れます。
ただし、日本円の場合は小数点以下の桁数が出てしまうので、日本円で利用する場合には調整が必要です。

 

商品一覧

初期バージョンのLive Searchでは標準機能とあまり変わらない実装でした。
現在の3系では、

  • 左ナビの絞り込みで、属性別に複数の条件が指定可能
  • Live SearchサーバーからGraphQLレスポンスに基づいて描画

となっています。

商品一覧

明らかに標準機能よりも優れる実装になっていますが、サジェストと同様に

  • 日本円で小数点以下の桁数が表示される
  • Adobe Commerce本体とは翻訳・ロケールが別管理

という問題点があります。
一覧の描画がJavaScriptで行われている関係で、Adobe側で改良されない限りはどうにもならないように感じられます。

キーワード検索結果

最後はキーワード検索結果です。
表示内容としては商品一覧とほぼ同じなので、ここではキーワードに対する反応だけに絞って解説します。

初期バージョンよりはヒットするようになった

色々とキーワードを入力して挙動を確認しましたが、以前のバージョンに比べて日本語での検索精度は上がっているように思います。
以前はまともにヒットしていなかったので、初期バージョンに比べれば改善しているという印象を持てます。

日本語の構文解析・評価は微妙

標準機能などでも問題になることがありますが、Live Searchでも日本語文に対する構文解析・評価はまだ微妙です。
いくつかのキーワードで確認した範囲では、

  • Ngram検索を行っている
  • 形態素解析は行っていない
  • 句読点や文意に影響しない文字列の整形・変換は行っていない

というように思われます。
Elasticsearch等で検索対象のテキストを処理する場合は、

  • 文意に影響しない記号の除去
  • 動詞などの原型戻し

などの処理を行います。

Live Searchではこのあたりの処理が行われていないので、若干微妙な語の区切りでヒットしてしまうケースがあります。
この点は今後の改善に期待したいところですね。

まとめ

最新版のLive Searchでは、以下の点に改善が見られました。

  • 管理画面側の各種設定
  • 商品一覧の描画・絞り込み機能
  • 日本語での検索精度

ただし、下記についてはまだ微妙(あるいは未改善)です。

  • 日本円での価格表示
  • 各部のテキストに対するローカライズ
  • 日本語文に対する構文解析・評価処理

英語圏をメインとして利用するぶんにはそれなりに使えると思いますが、日本語向けではまだ微妙です。
サードパーティ製の検索エクステンションや検索エンジンとの連携を検討したほうが良いかもしれません。