Magentoのエクステンションのうち半分以上は、利用するために費用が必要な商用のエクステンションです。
早くからマーケットプレイスを用意し、開発元であるMagento(現在はebay傘下の X.commerce, Inc.)がサードパーティであるパートナーや個人の参入を促してきました。

ですが、サードパーティ製エクステンションのライセンスについては開発元に一任されていて、非常に様々なバリエーションが見受けられます。
無償エクステンションの場合はライセンス費用がかからないため、気にしなくて済むのですが、商用の場合にはどのようなことに気をつければよいかが、パッと見わかりにくい状況です。
このエントリでは、Magentoの商用エクステンションを導入する際の注意事項について説明します。

商用エクステンションとは

商用エクステンションは、有償エクステンションとも言い換えることができます。
対になる表現としては無償エクステンションがあります。
つまり、利用に際し、いくばくかの費用が必要になるエクステンションで、その費用は一般的に開発元が開発を続けていくための原資に充てられると考えるのが妥当です。

無償だから善、有償だから悪、というわけではなく、継続した開発を行うためには額の大小こそあれ費用が必要になってきます。一般的に無償エクステンションは開発者の善意で提供されているため、場合によっては開発が中断・放棄されることも珍しくありません。
その点、商用エクステンションであれば費用と言う名の対価を得ることで、開発者のモチベーションを維持し、長期的な開発・サポートの提供が期待できます。

よくあるライセンスのパターン

商用エクステンションはいくつかのライセンスパターンに分類することができます。

  • Magentoのインストール単位で課金するもの
  • Magentoのインストール単位と、運用するウェブサイト・ストアビュー・商品などの数で課金するもの
  • 購入しさえすればそれ以上は自由であるもの
  • 年間ライセンス形式のもの
  • その他上記に分類できないもの

正直、エクステンションを提供する企業・個人によって、ライセンスは様々です。
どのパターンが優れていて、どのパターンが劣っている、ということはありません。

インストール単位と運用環境による課金を行うものは、2台目3台目のインストールや、開発環境用のインストールにも課金することができ、収益性を高めることができるでしょう(利用者がそれを喜んで受け入れるかどうか、は別問題です)。

購入しさえすれば後は自由になるものはかなり緩い条件であると言えます。 
開発元はインストールした環境をチェックしていないので、どのように使われているかを追跡することはしません。利用者の性善説に基づいて、エクステンションを提供していると考えるのが妥当でしょう。

年間ライセンスはMagento Enterpriseと似たライセンスであると言えます(Magento Enterpriseの場合はインストール単位の課金も行われます)。
年間ライセンスとすることで、アップデートやサポートを継続的に受け取る権利を利用者は得ています。
開発元は単発の収益ではなく、安定した収益による開発作業への再投資を滞り無く行うことができます。 

パターン別トラブルケース 

さて、商用エクステンションには様々なライセンスがあることがわかりました。
今度はパターン別のトラブルに関して説明します。

インストール単位や運用環境で課金するものの場合

このライセンス形態をとるエクステンションの場合、以下のような状況下で追加ライセンスが必要になることがあります。

  • アプリケーション(Magento)を実行するサーバを増設した
  • ウェブサイトやストア、ストアビューを追加した
  • 商品点数が運用にともなって増加し、購入時のライセンス上限を突破した
  • テストサーバを新しく作成した

購入時に無制限ライセンスを購入していれば良いのですが、それでも1インストール単位に対して無制限ということが多いため、サーバ台数を増やすとライセンスの追加購入を求められることがあります。

また、テストサーバにもライセンスを求めてくることがありますので、開発環境とレビュー環境を本番環境とは別に用意しなければならない場合は、その分のライセンス費用も考慮しておかなければなりません。

購入しさえすれば後は自由であるものの場合

このライセンス形態の場合、サーバ台数やテスト環境の設置などのあらゆる環境の変化に対してライセンスの追加購入を求められることはありません。
ただし、バージョンアップ等のサポートについては別費用であることが多いので、必要に応じて延長サポートなどに入っておくと安心でしょう。 

年間ライセンスの場合

このライセンス形態の場合、バージョンアップや不具合サポートは年間ライセンスに含まれることが多く見受けられます。
ですが、何台のサーバにインストールできるかについては別枠になっていることもありますので、注意しておく必要があります。
場合によっては他のライセンス形態よりも予算が多く掛かる可能性もあります。 

終わりに

はじめにも書きましたが、ライセンス費用がかかること自体が悪いわけではありません。
ただ、運用する環境に合わせてエクステンションを選ばないと、予想以上にランニングコストがかかることがある、というだけです。
Magentoには非常に多くのエクステンションがリリースされています。
同じような機能を実装したエクステンションで、異なるベンダー・ライセンスのものも存在します。
導入しようとしているエクステンションが、本当にサイトの運用形態に合っているかについては、導入前によく吟味してください。サイトがオープンして、しばらく経ってからエクステンションを変更する、となると場合によってはかなり大変な作業になることがありますから。