Magentoでサイトを構築・運用する場合に避けて通れないもの。それは決済サービスとの連携です。
決済サービスというと、注文ごとの手数料や月額利用料ばかりに目が行ってしまいがちですが、それだけで十分か?というとそうでもない場合があります。
このエントリではMagentoで使う決済サービスを選ぶ際のポイントについて解説します。

サービスが対応している決済方法の種類

どんなECサイト構築アプリケーションを利用した場合でも同じですが、利用しようとしている決済サービスがどんな決済方法に対応しているかを確認しておくことは重要です。
日本国内でよく見かける決済方法としては、

  • クレジットカード(3Dセキュア・カード番号お預かりサービス等を含む)
  • コンビニ番号方式
  • コンビニ払込票
  • ATM収納代行(ペイジー含む)
  • ネットバンク
  • 代金引換
  • PayPal
  • 各種電子マネー(Edy・iD・Suica・WAONなど)
  • キャリア決済(docomo・au・softbank)
  • その他(銀聯・Alipay・永久不滅ポイントなど)

があります。
Magentoは同じeBay傘下のPayPalについては標準対応しているので、日本の決済サービスが提供するバージョンのPayPal決済を利用するメリットはあまりありません(日本円限定であることが多いです)が、その他の支払い方法については自分が運営したいサイトの商品の特性をよく考えながら選ぶことが重要です。

例えば、電子マネーやキャリア決済は最大でも5万円程度までしか一度に決済できません(サービスの仕様によります)。
また、コンビニ決済や代金引換は30万円までしか決済することができません。
商品の価格が高額な場合は、クレジットカードや銀行振込などしか選択肢がない場合もありえます。

連携方法はどうなっているか?

決済サービスには大きく分けて2通りの連携方法があります。
どちらを選ぶかは好みなのですが、決済サービスによっては連携方法が1種類しかないケースもありますので、事前によく調べることが必要です。

モジュール連携方式

モジュール連携方式は基本的に支払いに関する情報をECサイト側で受け付けて、サーバーと決済サービスのサーバーとの間で通信を行って、決済を成立させる方式です。
この方式は更に2種類の方式に分かれます。1つは専用の接続用プログラムを使用するもの。もうひとつはWebサービスのようにAPIによる連携となっているもの。
どちらが良い・悪いということはありませんが、接続用プログラムを使用するサービスの場合、接続用プログラムの仕様によってはサーバーの設定を見直す必要性が出る場合があります。その代わり暗号化や接続に関する複雑な処理はライブラリが面倒を見てくれるため、場合によっては開発する手間が大幅に削減されることがあります。

APIによる接続の場合は、接続用プログラムがないのでサーバーの設定を見直す必要がありません。
その代わり、エラー制御やログの記録などはすべてサイト側で実装しなければなりません。

また、モジュール連携方式であっても、3Dセキュアを使用するクレジットカード決済や、ネットバンク決済、外部サービスに強く依存する仕様の決済方法の場合は、サービス側の画面に移動して決済を行うことになります。PayPalもMagento上では基本的にはモジュール連携方式となっています。

なお、モジュール連携方式の場合、実装方法によってはデータベースにクレジットカード番号を記録してしまったり、ログファイルなどに通信記録を残してしまうケースが有ります。
このような場合、Webサイトやデータベースに対する攻撃によって、クレジットカード番号が大量に流出してしまう恐れがあります。
Magentoの場合は基本的にカード番号を記録するようにはなっていませんが、連携するエクステンションの実装方法によっては、問題が起こりえる場合があります。

画面連携方式

画面連携方式はクレジットカード番号などの決済に関する情報をサービス側の画面で入力させるタイプの連携方式です。
情報をECサイト側で入力させないため、クレジットカード番号等がECサイトから漏洩するというリスクはありません。 

ただし、この方式の場合は購入手続きの途中で別サイトに「必ず」移動します。そのためデザインがECサイト側と異なってしまうために不信感を抱かれるケースや、PayPalのようにアカウントがないと決済ができない(Website Payment Plusを除く)サービスの場合は離脱されてしまうケースがあります。
また、決済画面がカスタマイズできないサービスの場合、Magentoの良い所である多言語対応をせっかくECサイト側で行っていても、決済画面がECサイト側の言語と一致していないというちぐはぐな面がでてしまうことがあります。 

複数サイトで使用する場合はどうか?

Magentoは複数サイトに対応しています。これは標準の機能です。
例えば扱う商品が異なるサイトを複数運用したい場合、Magentoの場合は設定でウェブサイトなどを追加した上で、サーバー側の設定を調整すれば複数サイトで運用が開始できます。

さて、こうなってくると今度は決済サービス側が問題になってきます。
決済サービスは基本的にサイトが異なると契約としては別になることが多く、アカウントが別になることも考えられます。
そうなると、Magento側は1つの管理画面でせっかく管理できているのに、決済サービス側は複数のIDを使い分けて管理しなければならなくなります。
複数サイトを前提にしてMagentoを選ぶのであれば、決済サービス側も複数サイト運用に対応したものを選んだほうが、管理の面から言うと絶対に楽です。 

日本円以外の通貨に対応しているか?

Magentoは複数の通貨に対応しています。もちろん各国の税率を設定すればそれぞれの国にあわせた課税もできます。
ところが日本国内で提供されている決済サービスのほとんどは、日本円でしか取引ができません。
Magento上では基本通貨と表示通貨を別にすることができますから、為替レートを駆使して表示上は米ドルやユーロで表示し、決済は円建てで行うことができます。

ですが、為替レートの都合で急激な円高や円安に振り回されてしまいます。
そうなった場合、海外向けのサイトはそれぞれの国の通貨を基本通貨として商品マスターを設定することになります。
しかしながら決済サービス側が円建てしか許容しない場合、このMagentoの良い所が活かせなくなります。
海外も視野にいれたサイトをMagentoで構築する場合は、円建てで決済をしていくのか、現地通貨(または主要通貨のみ)で決済をしていくのかを予めよく考えた上で、決済サービスを選ぶ必要があります。

サポート体制はどうか?

ECサイトはメンテナンス時以外止まることがありません。
24時間いつでも注文が入ってきて、いつ何時トラブルやイレギュラーケースが発生するとも限りません。

そんな時、決済に関するトラブルはシステムベンダーでは回避や原因究明ができないことが多々あります。
実際、システムベンダーが対応できるのは、エラーメッセージをみて、何が原因なのか一時切り分けをした上で、サイト側の問題だとわかった時だけです。不正利用や利用料金滞納によるカード停止など、サイト側ではどうにもならないケースは問い合わせるしかありません。
ですからサポート体制はできるだけ手厚いほうが良いと思います。
24時間体制で対応してくれるのが理想ですが、対応窓口がメール・問い合わせフォームのみなのか、電話対応もあるのかをよくチェックしておく必要があります。

入金サイクルはどうなっているか?

ある程度資金に余裕がある会社であればなんとかなると思いますが、立ち上げ間もないECサイトにとって、入金サイクルは重要な問題です。
もちろん早く入金されるに越したことはありませんが、一般的には月末締め翌月末払いや、オプションで入金サイクルの短縮などを行ってくれるケースもあるようです(ここは取引額の大小や交渉次第の可能性はあります)。 

自社の口座に直接振り込んでもらう一般的な銀行振込の場合であれば、すぐに資金が手に入るのですが、物販の場合は仕入れがあるわけですから、より短い入金サイクルは非常に魅力的です。
そういう意味ではPayPalの入金サイクルは他の決済サービスよりも短く、3−5営業日で銀行口座に引き出せるという点は強いでしょう。
(ただしPayPalはアカウントが必要であったり、別画面に移動するというサービスの特性上敬遠されるケースもあります) 

決済手数料と月間利用料はどうなっているか?

最後に決済手数料と月額利用料です。
長い目で見ると決済手数料の料率は無視できないコストになるのですが、そこは取引高が増えた際に交渉すれば良いと思います。
実際、PayPalのように取引高に応じて手数料が変わることを公表しているサービスもあるくらいです。

また、手数料と並んで無視できないのが月間利用料です。決済サービス側のシステムを利用するためにかかる費用で、この費用はサービスによって大きく変わります。
毎月の売上が少ない段階で、ここの費用は無視できないコストになります。できれば手数料が高くても月間利用料を抑えたほうが、初期は楽だと思います。

まとめ

さて、長々と書きましたが、決済サービスを選ぶ場合は手数料の料率だけで選ぶのはNGです。
自分がサイトでどんなものをどんなターゲットに対して売りたいのかをよく考えた上で検討しなければなりません。

決済サービスを運営途中で乗り換える場合は色々と準備や切り替え後の作業が多くなるため、できるだけ避けたほうが良いと思います。
ですから、できるだけ様々な決済サービスの担当者に話を聞き、各社比較した上で検討をするべきです。