Magento2.2の正式リリースから1年と2ヶ月。ついに待望の2.3系がリリースされました。

2.3系では1,800件の不具合や機能改良が行われたほか、コミュニティ主導で開発された新たな機能がいくつも正式版として利用できるようになっています。

2.3.0の注目しておきたい変更点

Magento2.3系では、以下の大きな変更・機能追加が行われています。

  • PHP7.0のサポート終了とPHP7.2のサポート
  • Open Sourceでも検索エンジンにElasticSearchが利用可能に
  • GraphQL APIのサポート
  • Multi Source Inventory(複数拠点在庫管理機能)が正式版に
  • 非同期APIと一括処理APIの追加
  • Google reCAPTCHAと二要素認証の対応
  • TinyMCE4.6のサポート
  • Declarative SchemaによるXMLベースのテーブル定義管理の導入
  • PWA-StudioによるProgressive Web Apps対応提供の開始
  • Page Builder(2018年末Betaリリース予定)によるCMS機能の拡張

もちろん、それ以外にも非常に多くの不具合や改良が行われているのですが、リリースノートがA4で60ページ以上あるため、すべてをお伝えしきれません。
ご興味のある方は公式Devdocsのリリースノートをご覧ください。

Magento2.3へのアップデートについて

既存のサイトをMagento2.3へアップデートする場合は、ご利用中のエクステンションがすべて2.3に対応しているかを事前に必ず確認してください。
弊社製の日本語化エクステンションにつきましては、現在動作検証中となっています。順次2.3対応版をリリースする予定となっております。

また、アップデートの際は予想外に時間がかかることや、不完全な形でアップデートが完了してしまう恐れがあります。
アップデートを実施される前に、必ずシステム全体と、データベースのバックアップを取ってから行うようにしてください。

Magento2.3が示すMagentoとオープンソースコミュニティのあり方

Magento2がリリースされて3年が経過しました。
この3年の間に、Magento2系のフレームワークは熟成が進み、動作の安定度とパフォーマンスが大きく向上しました。
同時に諸事情により残留していたMagento1時代を彷彿とする実装は徐々に改められてきています。
特に今回の2.3のリリースにおいては、Zend Framework1に使用した実装がかなり改められたり、パスワードなどのハッシュ化処理についても新しい実装が取り入れられています。

そして新機能の大量追加が行われている今回のアップデートは、2019年以降のMagentoの方向性をある程度示していると言えます。
例えばMulti Source Inventoryと非同期・一括処理APIは、より大規模なECサイト構築・運用に求められる機能です。
Magento1系よりもエンタープライズ市場に強く軸足を移しているMagento2系にとって、これらの機能はより大規模なサイトにも対応しつつ、かつ安定したパフォーマンスを発揮するために不可欠な要素です。

また、最近のモバイルWebではページ表示速度のみならず、オフライン時の閲覧も意識する必要があります。
PWA対応を進めることによって、モバイル端末での快適性を向上させ、さらなる売上を狙うことができるでしょう。
PWA-Studioは現在も開発中のプロジェクトではありますが、Magento本体とは別の切り口でPWA対応を行うことができる追加機能となっています。

注目すべきなのは、こういった機能の開発が本当にオープンに行われてきたことです。
Githubに移行して以降、Magentoの開発スタイルは段階的に変化し、現在ではフルタイムの開発者だけでなく、コミュニティから多くのメンテナーが選ばれています。 
さらにはMagento本体の実装とは別プロジェクトとして、様々な取り組みがGithub上で進められています。GraphQLやMulti Source Inventoryなどはその典型です。

今後も様々な新機能や機能改良がこうした形で進められ、Magentoをより魅力的なプラットフォームに進化させ続けていくものと思われます。