Magento Commerce Cloudは、2017年にリリースされたクラウド版のMagentoです。
現在はAmazon Web Services(AWS)上に構築した環境で稼働しており、日本を含む多くのAWSリージョン上で利用できます。

Magento Open Sourceや、Magento Commerceとは異なり、アプリケーションのカスタマイズやアップデート以外の部分についてはAdobe側が用意した環境が提供されます。

システム構成

Magento Commerce Cloudは下図のシステム構成で構成されています。
全5階層からなる構成で、オープンソース版やオンプレミス版では自前で用意しなければならないものが最初から統合された形で用意されています。

システム構成

Fastly

Fastly

最も利用者に近い場所にあるのは、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)サービスのFastlyです。
Magento2系はキャッシュサーバーとしてVarnishを推奨していますが、FastlyはVarnishをベースにしたCDNサービスで、Magento2系用の公式エクステンションもリリースされています。

Magento Commerce CloudではこのFastlyをCDNとWebアプリケーションファイアウォールの両方で利用し、パフォーマンスとセキュリティ性を高めています。
もちろんFastlyはMagento Commerce CloudでなくともOpen SourceやオンプレミスのCommerceでも利用可能です。

NewRelic, Blackfire.io

NewRelic Blackfire.io

Magento Commerce Cloudでは、アプリケーションの負荷やパフォーマンス統計を収集するためにNewRelicを採用しています。

どのページが何秒かかったのか。データベースやWebサーバーの負荷はどうだったのかを記録することによって、Webサイトの継続的な改善が行えるようにします。

同様にPHPのアプリケーションプロファイルサービスであるBlackfire.ioを標準採用し、Magentoを動作させているPHPプログラムがどのような動きをしたのかを記録・分析できるようになっています。Blackfire.ioではデータベース問い合わせにかかった時間も記録できるため、どのクエリに時間を要しているかや、同じようなクエリが数多く実行されることによって発生する無駄がないかを見つけ出すことができます。

Magento Commerce / Magento Business Intelligence

Magento Commerce Cloud上では、有償版のMagentoであるMagento Commerceが稼働しています。
Open Source版よりも機能が拡充され、プロモーションが分刻みで実行できるようになっている他、管理者の操作ログやウェブサイト別の権限設定などもできるようになっています。

さらに、すべてのMagento Commerce CloudにはBIツールのMagento Business Intelligenceが付属し、各種データを分析できるようになっています。

Git / Composer

もはや開発者にとって当たり前のツールになったGit。
Magento Commerce CloudではGitと連携したシステム構成とソースコードのバージョン管理ができます。

オンプレミスのMagento CommerceやOpen Sourceでは開発中のバージョンをプレビューするための環境は別途用意しなければなりませんが、Magento Commerce Cloudではブランチを作成することでプレビューサイトを簡単に作成することができます。

AWS

AWS

Magento Commerce Cloudを構成するサーバーはすべてAWS上で稼働しています。
(Fastlyなどの連携する外部サービスは除きます)

サーバーの負荷状況などはすべてAdobe側で管理してくれるため、契約者はサーバーの状態について気を配る必要はありません。

Magento Commerce Cloudのメリットとデメリット

Magento Commerce Cloudのメリットは以下のとおりです。

  • Magentoをベースにしたサイト構築で悩ましいサーバー構成・運用を考慮しなくて良い
  • アプリケーションのボトルネック解析やパフォーマンスをモニタリングできる
  • 専用のセキュリティパッチがリリースされる
  • 最初からDevOps環境が整っている
  • BIツールによるデータ分析ができる
  • 公式サポートが受けられる

反対にデメリットは以下のとおりです。主に費用面や契約、準拠法関係がデメリットになります。

  • 準拠法は米国法かつ契約書は英文
  • 最小構成でもそれなりに費用がかかる(基本、要見積り)
  • 費用はドル建て払いのみ(2019年現在)
  • ソリューションパートナーへの費用は内容に応じて別途必要

次回予告

次回はMagento Commerce Cloudの管理画面の紹介と、どのように操作を行うかを解説したいと思います。

弊社ではMagento Commerce / Magento Commerce Cloudを用いたサイト構築のご相談や、Fastlyの導入に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。